早池峰神社の御祭神・瀬織津姫とは? 祓戸の神と山深い社に伝わる早池峰神楽【岩手・花巻】

東北

瀬織津姫(せおりつひめ)に会える場所として名前は知っていても、そう簡単には行けない――東北・岩手、花巻の奥、早池峰(はやちね)山の西の登山口にある早池峯神社に、やっと参拝に伺う機会を得ました。

伺ったのは雨の日でした。予報を見て少しためらったものの、行ってみればその雨のおかげで、よりこのお社のことがよくわかる気がしました。長い参道を歩くあいだ、すぐそばを流れる稗貫川の流れと呼応するように、ずっと水の音がしています。それだけで、気持ちがゆっくりほどけていく場所でした。今回はそのまわり方、味わい方をご紹介します。

早池峰神社とは? 瀬織津姫とは?

早池峰神社の由緒書によれば、御祭神は瀬織津比売神(せおりつひめのみこと)。創建は大同二年(807)、早池峰山の頂に姫大神(ひめおおかみ)を祀ったことに始まると伝えられています。もとは姫大神、明治の神仏分離を経て瀬織津姫を祭神とするようになった、という記録も残っています。調べるといろいろなお話が出てくる社です。

鳥居をくぐり、階段を登りはじめてすぐ、後ろの川とは違う水音に気づきます。階段の右手に清流が流れ、小さな滝のそばに橋が架かっていました。渡った先には不動明王の立派な像がありました。
そのまま階段を登ると参道が奥へ長く伸びています。両脇は高い杉木立で、雨を感じない空間に入ったような心地です。

参道の奥に見える鳥居で、紙垂(しで)が1枚だけ揺れていました。一緒にいた友人が「歓迎されているサインだよ」と喜んでいます。嬉しい気持ちで、その鳥居をくぐりました。

早池峰神社 祓戸の神のご利益とは?

早池峰神社の現存する本殿は慶長17年(1612)、南部利直公の庇護のもとに建立されたもので、県の有形文化財に指定されています。山深い場所に、木彫りの彫刻がとても美しい、思いのほか立派な社殿が構えられていました。

瀬織津比売神は、古事記・日本書紀の本文には登場しません。唯一、大祓祝詞に出てくる水を司る女神様とされ、そのご神徳は、浄化や罪穢れの祓いにあります。祓い清められた罪を、山から流れ落ちる渓流によって大海原に持ち去ってくださると伝えられます。水を扱う仕事の人にご利益があるとも、商売繁盛、家内安全、心身の浄化などにもつながるともされる、祓戸の神の一柱として語られる神です。

参道を進み本殿の前に出る間も、水の音はずっと続きます。強くなったり、遠のいたり。祓戸の神が祀られる社で、水の音の中を歩く。それだけで、少しずつ余計なものが流れていくようでした。

本殿の階段の手前に、ひときわ立派な木が立っていました。地元の方と思われる男性が、その木の幹にしばらく手を置いて、静かに帰っていきました。挨拶をするでもなく、ただ手のひらを預けるように。この木が土地の人にとって何なのかはわかりませんが、ごく自然なその様子が心に残りました。

この社には、小さな祈りの場所があちこちに息づいています。参拝者の姿は少なく、子ども連れの家族が一組、お菓子や玩具がにぎやかに供えられた祠に手を合わせていました。境内の右手奥には龍神を祀る白龍社、左には山の神。裏手の大木の根元にも小さな祠があり、拝むとちょうど早池峰山そのものに向かって手を合わせる形になりました。

早池峰神社の御神体・早池峰山とは?

そもそも私がこの社に惹かれたのは、早池峰山そのものでした。標高1917メートル。山頂に奥宮があり、里宮にあたる早池峰神社は、東西南北の登山口にそれぞれ一社ずつ置かれています。大迫のこの社は、西の登山口にあたります。

山を神そのものとして仰ぐ。早池峰はそういう山です。南斜面には特別天然記念物のハヤチネウスユキソウをはじめとする高山植物が広がります。お社に立つと、その向こうに山まるごとが控えていることが感じられます。水の音も、もとをたどればこの山から下りてくるものでした。

早池峰神社に伝わる早池峰神楽とは?

早池峰神社は、500年以上の歴史を持つ伝統的な山伏神楽である、早池峰神楽でも知られます。以前、遠野で早池峰神楽を鑑賞したことがありますが、鶏の頭をかたどった冠の華やかさ、そして勇壮な踊りに心を奪われました。式舞のひとつ、鶏舞です。

早池峰神社に奉納されるのが岳神楽です。近くの大償(おおつぐない)神社に伝わる大償神楽とあわせて、早池峰神楽と総称されます。岳神楽は五拍子で勇壮、大償神楽は七拍子と、対をなすように伝えられてきました。能よりも前の芸能の面影を残すものとして、2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。

神楽殿には、立派な鶏の印の入った神楽幕が奉納されていました。

祭礼は毎年3月17日の蘇民祭、731日の宵宮、81日の例大祭。宵宮の晩には、神楽殿で岳・大償の両神楽が6時間にわたって奉納されます。例大祭では、山伏に先導された神輿と40体余りの権現様が、岳の集落を長い列になって練り歩きます。

2026年10月31日(土)と11月1日(日)には、花巻市で「全国神楽まつりハヤチネ2026」が開催されます。早池峰神楽が国の重要無形民俗文化財に指定されて50年を記念して今年だけ開かれる、貴重なイベントです。見に行きたいです…!

早池峰神社の授与所は午後3時まで、あとは宿坊で

一つだけ、この日の心残りは、授与所が午後3時までだったことでした。閉まったガラス越しにさまざまな授与品が見えて、とても残念でした。御朱印は、鳥居近くの宿・大和坊さんでいただけるとの貼り紙がありました。

それでも、この水の気配に柔らかく包まれた時間に、自分の日々の緊張をじゅうぶん、ゆるめてもらいました。大祓祝詞にしか出てこない祓戸の神様の、おもいのほか優しい力に触れた気がします。祓いとは、すっきりというよりも、余計な力が抜けることーーそんな体感でした。とにかくニュートラルになりたい方に、ぜひおすすめしたい神社です。

早池峰神社へのアクセス

早池峯神社
御祭神: 
 瀬織津比売神(瀬織津姫)
住所: 岩手県花巻市大迫町内川目1-1
アクセス: 東北自動車道 花巻IC、またはJR新花巻駅より車で約50分 駐車場有
参拝時間:24時間(授与所は土日祝10:00-15:00

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