鬪雞(とうけい)神社で熊野三山のお参りが? 別宮の由来と世界遺産の見どころ【和歌山・田辺】

和歌山

「ここにお参りすれば、三山参詣に替えられる」――そんな言い伝えのある神社が、熊野詣の玄関口にあたる街、田辺の駅前の街なかにあります。

JR紀伊田辺駅から歩いて5分。商店や住宅の並びが途切れた先に、ふいに立派な鳥居が現れます。鬪雞神社(とうけいじんじゃ)。小さな街に、驚くほど整った神社でした。創建1600年を超える、世界遺産登録された神社です。

なぜ「鬪雞(とうけい)」という名前なのか?

鶏が闘う、と書いてとうけい。強そうな名前です。鬪雞神社公式サイトによれば、由来は平家物語の壇ノ浦合戦にありました。

鬪雞神社の名は平家物語壇ノ浦合戦の鶏合せの故事に由来します。源平合戦の際に源氏・平氏どちらに味方するか迷う湛増が、紅白二色の鶏を神前で七番闘わせて神意を占い、全て白色の鶏が勝利したことから源氏に味方したとする物語に、鬪雞神社の由来があります。

神前の鶏合わせで歴史が決まった場所、と思うと、境内にぴんとした空気が満ちている理由もよくわかります。湛増の息子が武蔵坊弁慶だとも伝えられ、境内には湛増と弁慶の像、弁慶を讃える弁慶社もあります。

鬪雞神社は熊野三山の「別宮」?

鬪雞神社は、社伝によれば允恭天皇8年(419年)の創建。通称「権現さん」と呼ばれ、御祭神の中に熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)の神々が勧請されています。
ここに祈願して三山参詣に替えたとの伝承があり、三山の別宮的な存在として熊野信仰で大切にされてきました。

田辺は、本宮へ向かう中辺路と、海沿いに那智へ向かう大辺路の分岐点。山に入る前にここで手を合わせ、山に入れない人はここで三山に詣でたことになる。熊野信仰の広さと深さを、街なかの神社で感じることになるとは思いませんでした。

鬪雞神社の社殿 奥深い見どころは?

鬪雞神社の拝殿の奥には、社殿がずらりと横に並んでいます。熊野で最初のお参りだったこともあり、摂社にこれだけの神様が勢揃いされているのかと驚きました。……そんなことも知らないで行ったのかという話ですが、これは摂社ではなく、この形こそが熊野の基本形なのだと、あとで知りました。

公式サイトによれば、西殿、本殿、上殿、中殿、下殿、八百萬殿の六棟が並ぶ配置は「熊野十二社造」と呼ばれ、熊野本宮大社と同じ姿。本殿の御祭神は伊邪那美命です。このほか六社を合わせると熊野三山(本宮・速玉・那智)を含め二十の神様の名前が並び、さらに摂末社もあり、とてもここではご紹介しきれません。

六棟が一直線に並ぶ姿を保っているのは和歌山県内では鬪雞神社のみで、社殿は国の重要文化財に指定されています。これが本当に美しい。明治の大水害で流失する前の本宮大社の姿を、鬪雞神社が今に伝えているというお話もあります。

熊野本宮大社に参拝されていたら、あの社殿の並びを思い出しながら見比べる楽しみがあります。私は本宮参拝前だったので、ただただ驚きました。

鬪雞神社の樹齢1200年の大楠――歯痛に効く?

境内のご神木も立派でした。社務所近く、藤巌神社の鳥居のそばに立つ楠は樹齢1200年。田辺市の天然記念物に指定されています。
延命長寿・無病息災の信仰に加えて、楠の葉を歯痛の患部につけると平癒するという、歯痛治癒の信仰があるそうです。忠魂慰霊碑の側にも樹齢800年の大楠があり、2本そろって市の天然記念物です。

1200年ということは、湛増が鶏を闘わせた頃にはすでに大木だったのかーーあらためて、はるか昔とつながれる、神社の御神木のありがたさも感じました。

参拝したのは夕方でした。それでも社務所には人の気配があり、境内にも散歩の途中に立ち寄る人の姿があります。世界遺産で国の重要文化財で、それでいて夕方の散歩コース。この街の宝物だということが、空気からよくわかりました。

鬪雞神社の例大祭「田辺祭」は7月24日・25日

鬪雞神社の例大祭は「田辺祭」と呼ばれ、毎年7月24日(宵宮)・25日(本祭)に行われます。「お笠」と呼ばれる山車が旧城下の各町から出て、町中を曳き廻される、紀南を代表する夏祭りです。2026年は第465回。期間中は周辺に交通規制が出るため、公式サイトのマップの事前確認がおすすめです。

帰り道は「もち鰹」――私はまだ食べられていません

田辺の街には、ここでしか食べられない名物があります。水揚げしてから数時間の「もち鰹」です。やわらかすぎてきれいに切れないから「もち」の名がついたという話も聞きました。
お店でも問い合わせをしてから行かないと食べられないくらい争奪戦になるそうで、別行動だった夫が食べる機会に恵まれ、絶賛していました。次に田辺へ伺うときの宿題です。参拝に行かれる方は、あわせてぜひ探してみてください。

熊野三山をすべて回るのは、正直、簡単ではありません。休みが足りない、体力に不安がある、同行者の都合がつかないーーでもそんな時こそ、1600年以上、「三山参詣に替える」場所であり続けたこの神社へ。駅から徒歩5分の街なかに、熊野への美しい入口があります。

鬪雞神社へのアクセス

鬪雞神社
 御祭神: 伊邪那美命 ほか六社20神
住所: 和歌山県田辺市東陽1-1
アクセス: JRきのくに線 紀伊田辺駅から徒歩5分/南紀田辺ICから車で10分
授与時間: 参拝自由(ご祈祷は9:00-15:00)

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