箱根の神社といえば、まず思い浮かぶのは芦ノ湖畔の大鳥居で知られる「箱根神社」。休日には参拝客や観光客で賑わい、湖と鳥居を背景に写真を撮る人の姿が絶えません。
そんな箱根神社の奥に、静かで神聖な気が漂うもうひとつの聖地があります。それが「九頭龍神社本宮(ほんぐう)」です。
新宮は箱根神社の中にあるのですが、そこから少し足を延ばして訪ねる本宮への歩道は、水の世界へと続く回廊のよう。山と湖の気配に包まれながら、1200年以上続く祈りの地にたどり着くことができます。2026年の初詣にもおすすめしたい、その魅力をご紹介します。
箱根・九頭龍神社本宮とは?
九頭龍神社の御祭神は、芦ノ湖の守護神・九頭龍大神です。奈良時代、箱根大神の加護を受けた高僧・万巻上人(まんがんしょうにん)が、人々に災いをもたらしていた九つの頭を持つ毒龍を鎮め、湖中に石壇を築いて水神として祀ったのがはじまりと伝えられます。
かつて村では、龍を鎮めるために若い娘を湖に捧げる風習がありましたが、上人はそれを赤飯を供える儀式へと改めました。湖面に立つ赤い鳥居は、その伝承を今に伝える象徴です。
九頭龍大神は、商売繁盛・金運・良縁成就・心願成就など、あらゆる願いを受け止める神として古くから信仰を集めています。この心を受け継ぐ毎月13日の「月次祭」は、特に縁結びの神様に祈りを捧げる参拝者が多く集まります。箱根神社とあわせて参拝する「両社参り」も人気です。
九頭龍神社本宮へ おすすめの行き方は?
九頭龍神社本宮があるのは芦ノ湖のほとり、「箱根九頭龍の森」と呼ばれ、本州に分布する植物の約7割が自生しているといわれる豊かな森の中です。
おすすめのアクセスは、この森の中、芦ノ湖の東岸をたどる「セラピーロード」と呼ばれる遊歩道を歩くルート。箱根園やザ・プリンス箱根芦ノ湖から、森の入場口を入り、片道およそ30分。湖を眺めながら、誰かと時折言葉を交わしながら、あるいは一人でゆっくり思いを巡らせながらの散策は、心身をゆるやかに整えてくれます。
森の入口を入ってすぐ左手には「白龍神社」があります。御祭神は白龍大神。商売繁盛や縁結び、勝負運のご利益があるとされます。まずはここでお参りしてから、奥の本宮へと向かいます。
湖畔の木々の多くは二股に分かれて空へと伸びています。二つのものが一つに結ばれる象徴ともいわれ、九頭龍神社が「縁結びの神」として知られるゆえんのひとつです。
箱根・九頭龍神社本宮の弁財天社とは?
九頭龍神社本宮でお参り後、湖に続く階段を降りると、湖に向かう石段の手前に小さな社が見えます。ここが「弁財天社」。本殿と湖上の鳥居を結ぶ軸線上に鎮座し、まるで両者をつなぐエネルギーの中継点のような場所です。
ご祭神は宗像三女神の一柱・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)。金運、芸能、縁結びの女神として知られ、九頭龍大神とともに湖の霊力を見守っています。由緒によれば、奈良時代に天女が箱根霊場のひとつであった堂ヶ島(現在の恩賜箱根公園)に降臨し、弁財天と習合して祀られたのが始まり。戦後、箱根神社へ遷され、1964年の九頭龍神社本宮再建の際に再びこの地へ勧請されました。
宗像三女神は、天照大御神の使いとして日本列島の海を守護する三柱の女神──
多紀理毘売命(たぎりびめのみこと)、市杵島姫命、多岐津姫命(たぎつひめのみこと)。八岐大蛇(やまたのおろち)の化身・早子の娘とされます。母の罪を祓うため、姉妹とともに各地を巡り、人々に浄めと再生の力を授けた──そんな伝承が残ります。
その魂は、古代から「水」と深く結ばれてきました。
海、川、湖。水は常に流れ、すべてをつなぎ、浄め、命を育む。弁財天社が芦ノ湖の水面と向かい合うように建てられているのも、その象徴のようです。
弁財天社近く、特におすすめのパワースポットは?
九頭龍神社本宮と弁財天社の参拝後、特におすすめしたいのが、弁財天のお社の横にある岩と木のあたりに佇んでみることです。空気が澄みわたり、立っているだけで身体がピリッと引き締まるような感覚を覚えます。長い年月、この地を護ってきた神々の気配が確かに漂っていました。
そこからさらに下ると、水面のすぐそばまで降りられる場所があります。湖に手を浸したり、硬貨を清めたり、写真を撮ったりと、参拝者それぞれが思い思いの時間を過ごしています。
帰り道、風に揺れる木々を眺めながら歩く時間そのものが、まるで祈りの延長のようでした。
九頭龍神社本宮と弁財天社は、派手な観光スポットというよりも、静かな“祈りの湖”に寄り添う聖地。昨年、初詣にお伺いした時は、お正月を過ぎた最初の週末でしたが、近辺は渋滞もなく穏やかに過ごすことができました。
水と森と神々の気配が溶け合うこの場所に、心の奥にある「願い」や「感謝」を届ける。そんな時間を、ぜひ体験してみてください。
九頭龍神社本宮 御祭神
九頭龍大神(本宮)
市杵島姫命(弁財天社) 住所
神奈川県足柄下郡箱根町元箱根 防ヶ沢「箱根九頭龍の森」内 アクセス ・箱根湯本駅から伊豆箱根バスまたは箱根登山バスで「箱根園」または「ザ・プリンス箱根芦ノ湖」 下車、徒歩20〜30分 ・モーターボート利用:箱根ホテル桟橋・箱根園桟橋より九頭龍神社本宮桟橋まで(有料/毎月13日は無料参拝船運航あり) ・駐車場:「箱根園」または「ザ・プリンス箱根芦ノ湖」(有料) 箱根九頭龍の森 入場料:大人600円・子ども300円(月次祭の日は正午まで無料) 参拝時間:9:00〜17:00(最終入場16:30) 御朱印・お守りは箱根神社で授与

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