毎年12月2日・3日に開催される秩父夜祭。華やかな山車や花火で知られるこの祭りには、もう一人の重要な主役がいます。それが秩父今宮神社です。気軽な気持ちで訪れた境内には数々の神仏たちがたくさん。その光景から、かつて江戸時代に神仏習合の一大霊場として栄えた頃の賑わいが偲ばれました。
今回は、この秩父今宮神社で1000年以上もの歳月を見守り続けてきた御神木「龍神木」と、武甲山の神様を迎える神聖な「龍神池」、そして春から冬へと続く壮大な祭祀の循環について、詳しくご紹介します。
秩父今宮神社の起源は「龍神池」?
秩父今宮神社は、日本有数の古社として知られています。創建は西暦100年前後にまで遡るとされ、信州諏訪の勢力が秩父に移住した際、武甲山からの伏流水が湧き出る「龍神池」に「水神」を祀ったことが始まりと伝えられています。
その後、日本神話における国生みの神、伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)と伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)が祀られるようになりました。さらに修験道とも深く結びつき、江戸時代には神仏習合の一大霊場として大いに栄えたといいます。
現在、公式サイトに記載されている御祭神は多彩です。伊邪那岐大神・伊邪那美大神・須佐之男大神(すさのおのおおかみ)といった日本神話の主要な神々に加え、水の神様である八大龍王神(はちだいりゅうおうしん)、天皇家の守護神である宮中八神、役尊神(えんのそんしん、役行者=神変大菩薩)、聖観音神(しょうかんのんしん)、宇迦之御霊神(稲荷神)、大国主命(おおくにぬしのみこと)、厳島姫(いつくしまひめ)、稚霊日神(わくむすびのかみ)、栲幡千々姫(たくはたちぢひめ)、菅原道真公(天神)など、神仏習合の歴史を物語る多くの神仏が名を連ねています。
秩父今宮神社の奥にある清龍の滝、「お水取り」のご利益とは?
秩父今宮神社境内の奥には「清龍の滝」があり、ここから湧き出る水は平成の名水百選にも選ばれた「一粒万倍の霊水」として知られています。参拝者は「お水取り」としてこの霊水を持ち帰り、ご神水として日々大事に使います。
特に人気なのが、この水でお金を洗うという習わし。金運上昇のご利益があるとされ、たくさんの人がこの霊水で硬貨や紙幣を清めています。秩父今宮神社には、これだけたくさんの神様がいらっしゃるだけに、厄病除け・開運・金運・縁結びほか、煩悩を流すというものまでご利益もたくさんありますが、つまりは飲んだり洗い流したり清めたり、こうして思うままにご神水にふれられることがもうご利益なんですね。
秩父今宮神社は、秩父夜祭と深い繋がりがある?
秩父今宮神社と秩父夜祭の関係は、実は春から始まります。毎年4月4日、秩父神社で御田植神事が行われる前に、秩父今宮神社では重要な神事が執り行われます。それが「水分(みくまり)神事」です。
この神事では、武甲山からの龍神池の水神を迎え、龍神の依代となる「水幣(みずぬさ)」を秩父神社から訪れた神官・神部らに授与します。神官はこの水幣を秩父神社に持ち帰り、境内で御田植神事を行います。
そして12月2日と3日、収穫を祝って行われる秩父夜祭。この祭りの中核を担うのが、春の水分神事で授与された水幣を口に刺した「藁の龍神」です。夜祭の際、行列の先頭に立てられる大真榊を支える榊樽に巻き付けられ、山へと進んでいきます。
つまり、武甲山の山の神が春に龍神池へ下り立ち、水分神事で水幣として授与され、秩父神社の田植え神事を経て秋の豊かな収穫をもたらした後、冬のはじめの夜祭で再び山にお帰りになる――これが1年をかけて行われる、古代から続く秩父の祭祀なのです。春夏秋冬の循環の中で、神様が山と里を行き来し、人々に恵みをもたらす。壮大な物語が今も受け継がれています。
秩父今宮神社の御神木、樹齢1000年の「龍神木」とは?
境内に入ると、まず圧倒されるのが巨大な欅の古木です。これが1944年に県の天然記念物に指定された「龍神木」。樹齢1000年といわれるこの巨木は、幹周り9.1メートル、樹高26.2メートル。地上2.4メートルのところから五幹に分かれ、南北に26.3メートル、東西25.5メートルにも枝を広げています(2017年時)。
この大木は、この地に祀られている龍神の住まう場所として古くから信仰を集めてきました。大きな幹の周囲は、奉納された「八大龍王神」と書かれた赤い幟でぐるりと囲まれていて、近くに寄ることができません。でも昔からこうして人に囲まれてきたことを思わせる、その賑やかさが境内をさらに盛り上げている感じです。
1000年以上もの間、武甲山の神様が龍神池に下り立つ春の水分神事から華やかな冬の夜祭まで、そして人々の祈りも見守り続けてきた龍神木。見れば見るほど、確かに大きな木のふりをした何かありがたい存在そのものに見えてきます。
その前に立ち、伸びやかに広がる大きな枝を見上げていると、自分もこの実りが巡る大きな循環の中にあるんだなという安心感が湧いてきて幸せな気持ちになりました。
古代から続く信仰心がぎゅっと詰め込まれた秩父今宮神社。まずは今度の夜祭でご挨拶して、来年のお迎えから次の夜祭まで、様々な水のご利益を味わってみたいと思います。
秩父今宮神社 御祭神 伊邪那岐大神・伊邪那美大神・須佐之男大神・八大龍王神・宮中八神ほか 住所 :埼玉県秩父市中町16-10 アクセス:西武秩父線・西武秩父駅より徒歩10分 秩父鉄道・御花畑駅より徒歩6分 参拝祈願:9時〜16時30分

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