秩父・日野澤大神社で年に一度だけ、神楽の音とホタルの光が重なる夜

神社

秩父の山あいで、年に一度だけ体験できる特別な夜があります。
それは古くから伝わる「日野澤大神社神楽」の舞とお囃子、そして夜空に舞うホタルの光が交わるひととき。
今回は、秩父の温泉「満願の湯」で偶然出会った、忘れられない夜のお話をご紹介します。

秩父温泉「満願の湯」近くで出会える、夜だけのお祭りが?

7月始め、久しぶりに夫と大好きな秩父・皆野町の日帰り温泉「満願の湯」に行きました。のんびりと湯船につかり、すっかりあたたまって帰ろうとしたら、駐車場に見慣れない人の列ができていました。

「これから臨時バスが出ます。ホタルはそろそろ終わりだけど、きれいですよ」。そう教えてくれた案内の方の言葉に惹かれ、私たちも慌ててバスへ。ここから10分ほど上がったところで6月末から1週間、「秩父華厳の滝ヒーリングナイト」、滝の夜間ライトアップとホタル鑑賞会が開かれていました。さらに案内をよく見ると、その夜だけ「日野澤大神社 神楽」が特別奉納されるというのです。これは見に行かなくては!

荒川の源流に鎮まる、日野澤大神社とは?

秩父盆地の一角にある皆野町は、荒川の一源流である日野沢川の渓谷沿いに17の自然集落が点在する町です。令和6年度の調査で人口は約9,000人、約4,000世帯。その総鎮守として祀られているのが、日野澤大神社です。

入り口にある日野澤大神社の「御由緒」によると、御祭神は神功皇后、大山祇神。奥社があり、本社・奥社ともに、大山祇神を起点とする信仰が伝えられています。

春と秋の祭礼に奉納される「日野澤大神社神楽」は、明治14年(1881年)、中断の危機にあった秩父神社直属の神楽を受け継ぐために「日野沢代々協会」として組織化され、後に町指定民俗文化財、無形民俗文化財となりました。昭和4年、秩父神社に神楽団が復活し、秩父神社への奉仕も終わったそうです。

秋の奥社祭では、同じ皆野町の民俗文化財である「門平の獅子舞」とあわせて奉納され、大晦日に行われる「師走の大祓」は、一年間の罪穢れを祓い除くために山を下り、日野沢川の清流に人形を流す特殊神事として今も行われているそうです。

地域ぐるみの舞台、最後に現れた日本最古の和歌とは?

バスに乗ってすぐ、交通案内をする人たちの姿が見えてきたところで下車。会場の日野沢川ふれあい広場にはキッチンカーが並び、子どもたちが走り回っていました。まだ日も暮れきっていない空の下、まずは日野澤大神社の方へ坂を上がっていくと、山に向かって御本社、里を見下ろすように神楽殿が見えてきます。

神楽が始まると、静まり返った夜の空気に笛と太鼓が響き、舞が披露されます。少し離れた場所で見ていると、地元の方が「どうぞ」と、紙コップに入った温かいコーヒーを手渡してくれました。

舞台の前では、神楽にあわせて踊る小さい子たち、それを見守るお姉さん、兄の舞を最前列で見る妹……お囃子の合間に、奏者でもある司会の男性が、「実はこの子はウチの子で、この子はこの女性の子どもです」と笑顔で紹介します。

みんなできょうだいのように走り回ったり、抱っこしてあげたり、じゃれてひとかたまりになったりしているそばにいるだけで、自分もあたたかい、懐かしい風景にすっぽり入り込んでしまったような感じです。

やがて「大黒さま」が登場し、お囃子に合わせて餅をバラバラっと撒くたびに、子どもも大人も笑いながら争奪戦を繰り広げます。長い伝統を受け継ぎながらもそれぞれに楽しそうな人たち、その暮らしにゆるやかに溶け込んでいる神楽に、この地域の魅力を感じました。

中でも印象的だったのは、「大蛇退治」の演目です。スサノオノミコトが出雲の地で詠んだとされる日本最古の和歌が奏上されました。

八雲立つ いづも八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を

ーー妻・クシナダヒメのために宮を建てたときの歌で、「雲のように八重の垣をめぐらし、妻をその中に置いて大事にする」という意味と伝えられています。神楽の中で和歌が入るのは珍しいそうです。この場所であらためて出会えたこの最古の歌の意味を考えてみたくなりました。

そしてホタルの群れはどこに?

神楽の舞が終わるころ、辺りはすっかり闇に包まれていました。
参道を歩き出すと、あたりにはふわっと、小さな光がひとつ、またひとつ。さらに会場の奥、真っ暗な川べりに進むと、たくさんのホタルが舞っています。

100年以上前の景色とつながったような不思議な気持ちになったまま、真っ暗な道を再び戻り、帰途に着きました。

日野澤大神社(ひのさわだいじんじゃ)

御祭神 
神功皇后  大山祇神

住所:  埼玉県秩父郡皆野町下日野沢3543-2
アクセス:秩父鉄道 皆野駅から皆野町営バス日野沢線「大神社前」まで16分
     駐車場あり

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