三つの川が合わさる場所に、日本最古の水の神様が祀られている――それが丹生川上神社中社について最初に知ったことでした。地図で見ると、山深い場所にあります。
その日は午前に大神神社へ伺い、絶滅前、ニホンオオカミが最後に捕獲されたという場所に立つ「ニホンオオカミの像」に手を合わせてから、午後にいちばん行きたかった場所、丹生川上神社中社へ。桜井から吉野の山あいへは意外に近く、ほっとしながら車を降りると、聞こえるのは川音と、時折行き交う車の音だけです。
丹生川上神社中社とは?
鳥居の手前で車を降り、何かが眩しいと思ったら川面でした。
中社は四郷川・高見川・日裏川という三つの川の合流点に鎮座しています。境内が川に囲まれているというより、川の真ん中に社があるような立地です。広く美しい川がとても澄んだ気を放っていて、水面から話しかけられているような不思議な感じがありました。それぐらい、川の存在感がすごいです。
「水の神様」という言葉を、頭ではなく目と耳で感じます。
丹生川上神社中社の御祭神は? ご利益は?
丹生川上神社中社の御祭神は罔象女神(みづはのめのかみ)。水の一切を司る神様と伝えられています。創祀は白鳳4年(675年)。天武天皇が受けた御神教が伝わっています。
人聲の聞こえざる深山吉野の丹生川上に我が宮柱を立てて敬祀らば天下のために甘雨を降らし霖雨を止めむ
以来、朝廷が雨乞いには黒馬を、雨止めには白馬を献じた社として、平安時代には「二十二社」の一つに数えられました。三社めぐりの公式案内には、こうあります。
神武天皇さまは苦境の中「丹生川上」を訪れ、この地で天神の教示を受け、後に畝傍橿原で即位されたと語られます。この故事に因み歴代天皇は苦境に立つと必ず吉野を訪れ、神様の力をいただきます。
苦境のときに訪れる場所ーー境内で澄んだ川を眺めていると、神武天皇ゆかりの地、というはるか彼方にある物語へつながっていくような感覚になりました。
御祭神は罔象女神のほか
相殿: 伊邪奈岐命・伊邪奈美命
東殿: 大日孁貴尊(おおひるめむちのみこと/天照大神)
譽田別命(ほんだわけのみこと/応神天皇)
八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)
西殿: 開化天皇
上筒男命(うわつつのおのみこと)
菅原道真公
綿津見神
大国主神
事代主神
大切な神様がたくさん並び、篤い信仰の場所だったことが伝わってきます。
丹生川上神社は歴史の中で所在が分からなくなり、明治から大正にかけて上社・中社・下社の三社になった経緯があります。調べるといろいろなお話が出てきますが、現在は三社が古くからの祭祀を継承しています。
叶えの大杉の近くにはご神水「丹生の真名井」(清めのお水)があります。本殿裏手の乎牟漏岳(おむろがだけ)が源流です。ひと口、祓い清めにいただきました。
丹生川上神社中社の御神木とは?
丹生川上神社中社の境内には、樹齢数百年を数える大木がいらっしゃいます。
叶えの大杉 樹齢1000年余、樹高51.5m、幹廻り7.3m 願いを叶えてくださるご神威
相生の大杉 樹齢800年、2本の大杉が並ぶ。夫婦円満・延命長寿のご加護
私が伺ったのは午後、参拝者がちょうど一段落した直後でした。
落ち着いた空気の中、大杉の前でじっと佇む人たち。時折、木を見上げながら、手を幹に置いて祈り、近くにただ立っているーー私も叶えの大杉の近くで、たっぷり時間を過ごして帰りました。
丹生川上神社下社との二社参拝、三社めぐりと水まつり
次の日には下社にも伺いました。社殿の趣は違うのに、川のそばの澄んだ空気はとてもよく似ています。二社をまわると、このあたり一帯が「水の聖地」なのだと肌で分かります。
三社すべてを巡った人は、吉野の手すき和紙で作られた特別な御朱印紙をいただけます【要確認: 授与方法・初穂料】。また、7月19日には12時30分から「吉野・丹生川上水まつり」が行われます。この日は特別授与品「神の霊(水晶)」も数量限定で受けられます。
中社から歩いて行ける「東の瀧(龍神の瀧)」は、丹生川上の名の由来にもつながる場所と伝えられています。「龍玉」に龍神さまへの願いを込めて投げ入れて祈る場所として知られています。日暮れが近づき、今回は遠慮しました。
丹生川上神社中社へのアクセス
公共交通では、近鉄榛原駅からバスとコミュニティバスを乗り継ぐルートがありますが、本数は限られ、実際には車での参拝が現実的です。駐車場は約30台。
それにしても、大神神社からわずか1時間足らずでこの場所に着いてしまう。桜井・吉野エリアの密度に、あらためて驚きます。
決めなければいけないことを抱えて、頭の中が騒がしくなっているとき。この神社の川音の中に立つと、余計なものが水と一緒に流れていきます。
いま自分の中でいちばん流れが滞っているのはどこか――それがふっとわかるような時間でした。
丹生川上神社中社 御祭神(本殿) 罔象女神 相殿: 伊邪奈岐命・伊邪奈美命 東殿: 大日孁貴尊(天照大神)・譽田別命(応神天皇)・八意思兼命 西殿: 開化天皇・上筒男命・菅原道真公・綿津見神・大国主神・事代主神 住所: 奈良県吉野郡東吉野村小968 アクセス: 近鉄榛原駅からバス(東吉野村役場行)約50分、コミュニティバス乗継。車が現実的。駐車場約30台 開門時間:参拝自由、社務所8:30-16:30/17:00(夏期)
2社めぐりをされる方に
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