京都の車折神社(くるまざきじんじゃ)は、幅広い厄除けのご利益で知られる神社です。そしてもうひとつ、たくさんの芸能人の名前が並ぶ、末社・芸能神社の「朱色の玉垣」でも知られています。名前の通り、芸能人やアーティストのご祈願場所であり、推し活スポットです。
桜の名所でもあり、華やかな印象のある神社ですが、実際に訪れてみると、そこには「名前を持って生きる」ことの静かな重みがありました。
車折神社とは?
車折神社のご祭神は、清原頼業(きよはらのよりなり)公。
平安時代後期の儒学者・官人で、学問・知恵・契約や約束事に関わる神様とされています。
「学問の神様」というと北野天満宮の菅原道真公が有名ですが、車折神社はもう少し実務的で、知恵をもって現実を動かす力に近いニュアンスがあります。
創建は平安時代後期。清原頼業公の別邸跡に建立されました。後嵯峨天皇がこの地を通った際、牛車の車軸が折れて動かなくなったため、祈願したところ再び動いたことから、 「車折(くるまざき)」の名がつけられたとか。
災厄を止め、運を切り開くといった意味合いから、ご利益も幅広く、金運・商売繁盛・良縁成就・合格祈願・厄除け・芸能などに及びます。
芸能神社のご利益と見どころは?
車折神社境内にある「芸能神社」は、15の末社のひとつで、芸事・芸術・表現活動の守護神として信仰されています。
御祭神は「天宇受売命(あめのうずめのみこと)」。天照大御神が天の岩戸にこもられてこの世が暗闇になった時、岩戸の前で演舞されると大御神は再び御出現になり、この世が再び光を取り戻したという神話にもとづいています。
境内には人気アイドルグループのメンバーや有名俳優、中にはアニメキャラクターや作品、番組の名前が書かれた朱色の「玉垣」と呼ばれるお札が並び、ファンと思われる参拝者の方々もあちこちで、“推し”の名前と一緒に記念撮影をしています。
とはいえ玉垣に並ぶ名前は、よく見ると知っている名前ばかりではありません。それでも同じように、朱色の板に刻まれ、存在している。その並びの中に自分の名前を想像してみると、少しだけ背筋が伸びるような感覚があります。
誰かに見つけてもらうことを待つのではなく、自分の名前を引き受けて、外に差し出していく静かな覚悟。その気配が確かに流れていました。だからなのか、推し活の高揚感も重なるからか、念が集まる場所のはずなのに、境内はからりとしたお祭りのような雰囲気です。
車折神社・芸能神社への正式参拝
毎年、芸能神社に伺っている芸能関係の友人の正式参拝に同席させてもらいました。
手水舎を経て清めの社で身を清めた後に、車折神社と芸能神社にご挨拶をしてから、社務所でご祈願を申し込みます。願いごとを選び、手続きを終えて待っていると、名前を呼ばれて車折神社の本殿へ。
申し込みの時に作品の名前まで入れると、ご祈祷の時に、しっかりその名前までが読み上げられ、神様に祈っていただくのが心に残ります。読み上げられる時間は、思っていた以上に静かで、そして現実的でした。
特別な高揚感というよりも、「これを引き受けていくのだな」という感覚が、すっと体に入ってくるような時間です。自分の名前を大切に思うーー当たり前のようで、忘れていた気がしました。
車折神社の「祈念神石守」も受け取り、願い事を込めて参拝します。叶ったら、身近な石に感謝を記し返納する習わしがあります。
玉垣は1枚21,000円で、芸能・芸術・技芸に携わるすべての人が奉納でき、2年間掲示されます(本人または正式な許可を得た代理人に限る。ファンは不可)。
境内にびっしり並ぶ玉垣の名前を眺めるうちに、華やかな芸能人やアーティストの、単なる“成功祈願”ではなく、自分の名前を引き受けて世に出ることへの覚悟の形なんだな、という気持ちになりました。
帰りは裏参道から徒歩数分、嵐電の車折神社駅まで出て、嵐山方面に行くのもおすすめです。
少しだけ現実に戻りながら、自分の名前について考えた時間が、静かに残りました。
車折神社・芸能神社へのアクセス
車折神社 御祭神 清原頼業公 芸能神社 御祭神 天宇受売命 住所:京都市右京区嵯峨朝日町23番地 アクセス: 表参道側 市バス/京都バス・車折神社前 裏参道側 嵐電(京福電車)・車折神社駅 駐車場 10台 開門時間:9:30~17:00(御祈祷受付は10:00-16:00)

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