伊勢神宮外宮の正宮、豊受大神宮を参拝したあと、次に向かったのは外宮の第一別宮 多賀宮(たかのみや)です。
7、8年前に初めて参拝したとき、なにか体験したことのない力強さを感じて以来、ずっと心に残っていた場所でした。「またいつかお参りしたい」。そう思っていた願いが叶い、久しぶりに伺ったこの日は平日。それでも多賀宮へ続く長い石段の上には行列ができていて、あらためてこの場所が多くの人を惹きつけていることを実感しました。
なぜ多賀宮は、これほどまでに「強い」と感じられるのでしょうか。
伊勢神宮外宮 多賀宮とは?
多賀宮は、伊勢神宮・外宮にある第一の別宮です。
外宮には多賀宮・土宮・風宮・月夜見宮の四つの別宮がありますが、その中でも多賀宮は正宮に次ぐ格式を持ち、社殿の規模も正宮に次いで最も大きく造られています。
内宮の別宮「荒祭宮」と同じく、正宮に続いて祭典が行われる重要な場所であり、『止由気宮儀式帳』や『延喜式』にも記され、祈年祭・神嘗祭・新嘗祭では正宮と同様に勅使が参向します。20年に一度の式年遷宮も、第一別宮のみ正宮と同じ年に行われるなど、重んじられています。
その成立は、今からおよそ1500年前。第21代雄略天皇の御代、天照大御神の御神勅により、丹波の国から豊受大御神が御饌都神(みけつかみ)として迎えられ、外宮が創祀されたとともに、多賀宮も定められたと伝えられています。
伊勢神宮別宮 多賀宮の御祭神とは?
多賀宮の御祭神は、豊受大御神荒御魂(とようけのおおみかみのあらみたま)。荒御魂というと、「荒々しい神様」という印象を持ちますが、どうもそうではなさそうです。荒御魂とは、神の霊の働きのうち、物事を動かし、現実を前に進める側面を指します。
古くから、日本の神の霊は「一霊四魂(いちれいしこん)」――直霊を中心に、荒魂・和魂・幸魂・奇魂の四つの働きがあると考えられてきました。中でも荒魂は、有事のときに発動し、意志を顕わにする力。内宮の荒祭宮、そして外宮の多賀宮は、その荒御魂をお祀りする場として知られています。
荒御魂=動かす力。
そうとらえると、多賀宮のことが少し見えてくる気がします。
伊勢神宮別宮 多賀宮がある場所とは?
神名帳には「高宮」と記されている通り、多賀宮は高い場所に鎮座しています。
正宮までは横に広がるように歩いてきた外宮の参道から、亀石を渡り、98段の石段を一気に登る。このしくみ自体が、ここから先が別の場所であることを、体に教えてくれます。
階段を登り切った先で感じるのは、外宮の一部でありながら、明らかに空気の密度が違うこと。静かなのに、張りつめていて、力強い。ここでは気持ちを高めようとしなくても、自然と背筋が伸びていく感じです。
伊勢神宮別宮 多賀宮では、お願い事をしてもいい?
伊勢神宮外宮の正宮では、神恩感謝や国家安寧、世界平和といった「公」の祈りを捧げるのが基本とされます。でも多賀宮では、個人的な願い事をしてもよいとされています。
地元では親しみを込めて「あらたかさん」と呼ばれ、商売繁盛や事業の成就、人生の節目に訪れる人も多いようです。でも多賀宮の雰囲気は「願いを叶えてもらう場所」というより、前に動く力を静かに分けてもらう場所、あらためてそんな感じを受け取りました。
伊勢神宮別宮 多賀宮のご利益とは?
久しぶりに参拝した多賀宮は、相変わらず多くの人で賑わっていました。行列は長いものの、進みは早く、7年ぶりに立った社殿の前で感じた力の強さも、以前と変わりません。
ご利益はいくつも語られています。でもこの日いちばん残ったのは、「ありがたい」という感覚だけでした。
この場所に立てたこと自体が、すでにご利益だった――そんな感覚です。
参道には別宮遥拝所も設けられていて、上まで登れない場合でも祈りを捧げることができます。でも、もし体力とタイミングが許すなら、少しでも登ってみることをおすすめします。
参拝後に残るのは高揚感ではなく、静かなありがたさ。
外宮を歩いて整えたあと、もう一段だけ登りたいと感じたとき――
多賀宮の豊受大大御神荒御魂が、迎えてくださると思います。
伊勢神宮 外宮別宮 多賀宮 御祭神 豊受大御神荒御魂 住所:三重県伊勢市豊川町279 アクセス:近鉄・JR伊勢市駅から徒歩約5分 参拝時間: 1月-4月・9月 5:00~18:00 5月-8月 5:00~19:00 10月-12月 5:00~17:00 周辺混雑情報: https://www.rakurakuise.jp/

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