「熊野は”呼ばれた人しか行けない”」――そう聞くと、行きたいと思いながらも、少し身構えてしまいます。
そして地図を開くと、もうひとつの壁にぶつかります。本宮・速玉・那智が、思っていたよりずっと離れている。玉置神社は県をまたいで奈良にあります。どこから、何日で、どの順で回ればいいのか。旅程を組みかけたまま手が止まった――そんなときに読んでもらえたらと思います。
この記事は、熊野の各社を訪ねた記録の入口です。回り方の骨格が見えたら、気になった一社から、それぞれの記事をのぞいてみてください。
(写真は熊野の中辺路からのぞむ大斎原の大鳥居)
熊野三山とは? なぜ時間の向きが変わるのか
熊野三山とは、熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の三社を指します。
熊野速玉大社の公式サイトによれば、熊野には「三山三世」という信仰があります。速玉は過去世、那智は現世、本宮は来世。三社それぞれに、救ってくださる時間の向きが違う。
これは知識として知っていても、続けて歩くと、体のほうが先に受け取ります。本宮では心がこれから先へ広がり、那智では滝を前に現在へ引き戻され、速玉では始まりの地に触れて過去へさかのぼっていくーー三社がつながって初めて、熊野という構造がまるごと見えてきます。
熊野詣の回り方は? まず「どこまで入るか」を決める
熊野三山をすべて回るのは、実際、簡単ではありません。休みが足りない、体力に不安がある、同行者が忙しい――そうした人のために、熊野には玄関口も、深く入っていくための「奥」もあります。
順番以上に大切なのは、「どこまで深く入るか」を先に決めておくこと。街なかで三山のお参りを一度にできる場所もあれば、崖を登り、奥宮まで足を延ばすこともできます。玄関口から奥へ、順にご紹介します。
熊野詣の玄関口――鬪雞神社(田辺)
田辺の駅前に、鬪雞(とうけい)神社があります。ここに祈願すれば三山参詣に替えられるという伝承のある、熊野の玄関口。拝殿の奥に社殿が横一列に並ぶ姿には、思わず声が出ました。この形が何を意味するのか――熊野の「基本形」を、街なかで先に受け取ることになります。
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那智エリア――熊野那智大社と飛瀧神社(那智の滝)
青岸渡寺の先で、ふいに視界が開けます。遠くに現れた那智の滝と三重塔は、昔の掛け軸をそのまま差し出されたようで、これが現実の景色なのか一瞬わからなくなるほどでした。
御神体である滝の前に立つと、社殿はなく、ただその前に立つしかない。そこで聞いた「ある音」について、書きました。
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本宮エリア――熊野本宮大社と大斎原
中辺路を歩いて本宮へ。「よみがえり」の厳かさとは裏腹に、あたりは朗らかで、聞こえてくるのは世界中の言葉でした。
そして本宮を出てからが、本当の始まりでした。旧社地・大斎原で、スマホのカメラが反応しなくなったのです。導きの神・八咫烏と、誓約書として用いられてきた牛王神符のことも含め、そのわけは記事にまとめています。
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新宮エリア――神倉神社と熊野速玉大社
新宮では、まず神倉神社の石段に立ちすくみます。鳥居の前で「無理無理無理!」と声が上がるほどの急勾配。それでも登り切った崖の上、御神体・ゴトビキ岩に手を当てたときのことは、うまく言い表すのが難しいです。
その足で歩いて15分、熊野速玉大社へ。神倉の空気を体に残したまま、地続きのまま別の世界へ移っていく。樹齢千年のナギの大樹の前で、「甦りの地」の本意に触れます。
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花の窟神社――日本最古の祈りのかたち
海沿いの国道沿いに、高さ約45メートルの巨大な岩を御神体とする花の窟神社。伊弉冊尊が葬られた御陵と伝えられる、日本最古といわれる社です。
参拝の作法が、他のどことも違いました。願いごとを思うより前に、きれいにリセットされる――その独特のお参りの仕方は、記事でご紹介します。
▪️熊野 花の窟(いわや)神社はなんの神様? ご利益は? 日本最古のパワースポットの不思議な参拝方法
熊野の奥宮――玉置神社(奈良)
熊野三山の奥の院とされるのが、奈良県側の玉置神社です。標高1076m、「呼ばれた人しかたどり着けない」と言われる修験の聖地。
鳥居をくぐった瞬間に空気が一変する、霧と巨杉の参道が続きます。ここへ伺ったのは人生の転機のときで、参拝後に起きた変化のことを、書きました。三山を回りきったあと、もう一歩深く入りたくなったら。
▪️玉置神社で人生が変わる? 最強パワースポットのお札とは? 呼ばれた理由と参拝後の変化【奈良】
熊野は、一度で回りきる場所ではない
熊野の神社はそれぞれに、まったく異なる空気が流れる場所でした。そして街なかの玄関口で三山に替えることもできれば、崖を登り、奥宮まで山を分け入ることもできる。手放したい「何か」がどんなものであっても、熊野は応えてくれるように感じました。
まずは気になった一社から、よきご参拝を。

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